ユナイテッドアローズ 流山ロジスティクスセンター

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7年後の決断──ユナイテッドアローズがマルチシャトルの拡張ではなくAirRobを選んだ理由

■導入シチュエーション
○  1日3.5万~4万ピースを入出荷するセレクト編集型SPA(製造小売)における店舗およびECの在庫を一元管理する物流センター
○  t-Sort AGVや自動倉庫システムなど、複数の自動化マテハン導入済み物流センターに、新たにAirRobを導入

■ 導入前の課題
○ 物流センター開設時には1日2.5万ピースだった入出荷量が、現在では3.5万ピースに増加し、今後も年10%程度の増加が見込まれるため、保管スペースの確保が急務だった
○  同社はOMO戦略の一環として店舗とECの在庫を一元化しており、さらなる入出荷オペレーションの省人化・効率化や欠品リスクの抑止が求められていた

■ 導入理由
○ 取り扱い商品の特質上、一定量の在庫を平置きしていたが、より高いスループットと高さ方向を活かした高密度保管が実現できると評価
○ 大規模物流施設が立ち並ぶ立地ゆえに作業員等の人材確保が難しくなっている状況を踏まえ、省人化に貢献できると評価
○ 消防法令を遵守したうえで実現可能な拡張性の高さに加え、BCP対策にも優れていると評価

■導入後の効果
○  従来、平置きで15万ピースほど保管していたスペースをAirRobに置き換えたことで、2倍の30万ピースまで保管できる高密度保管を実現
○  今後、WMSとの連携やRFIDによる検品などを実装することで、時間あたり2,000ピースの高スループットと省人化効果を見込む
○  保管量については、AirRobをさらに拡張することでフェーズ1では45万ピース、フェーズ2では80万ピースまで増加させることを目指す(※フェージングについては後述)


 

―AirRob導入までの経緯―

2018年8月:

ECと店舗の在庫一元化を目的として、千葉県流山市にユナイテッドアローズ流山ロジスティクスセンター(以下、UA流山LC)を竣工、物流の基幹拠点としての運用をスタート。
大型マテハン機器やピースソーターなどの大型自動化マテハンを導入した最先端の自動倉庫として注目を集める。

2023年9月:

EC需要の拡大に対応するため、t-Sort AGV(sd5)を導入。
EC向けの出荷工程を部分的に自動化し、物量波動に柔軟に対応できる体制を構築。

2024年9月:

フェーズ1では、高密度保管の実現と、さらなる省人化・効率化を目指し、AirRobを導入。保管量をAirRob導入前の15万ピースから45万ピースへと拡大。

2026年1月(予定):

フェーズ2では以下に挙げた機能の拡張を予定。

  • WMSと連動し、順建て出荷を実現
  • RFIDとAirRobを組み合わせた自動検品を実現
  • 保管量を45万ピースから80万ピースへ増加

―「AirRob」導入前の背景と課題―

店舗、ECとも好調ゆえに、求められる物流センターのさらなる進化

ユナイテッドアローズ SCM本部 物流推進部 藤嶋秀典氏

Q.UA流山LCは、国内でも有数の自動化物流センターとして知られていますが、なぜ今回AirRobを導入し、さらなる進化を図る必要があったのでしょうか?

A.

(ユナイテッドアローズ 藤嶋氏[以下、UA 藤嶋氏])UA流山LCは、当社のOMO戦略の要とすべく、店舗とECの在庫を一元管理することを目的に2018年に竣工しました。2022年3月からECのオペレーションもすべてここで行うようになりました。

しかしながらビジネスが好調であるがゆえに、在庫の保管能力が当初の想定を上回ってしまったのです。UA流山LC開設時には1日2.5万ピースだった入出荷量も、現在では3.5万ピースまで増加しています。さらに今後も年10%程度の取扱量増加が見込まれるため、保管スペースの確保は急務でした。

センコー 関東主管支店 流山ロジスティクスセンター センター長 石川雄三氏

(センコー 石川氏)ファッション物流の特徴である多品種小ロットの商品を迅速に入出荷するという業務特性ゆえ、UA流山LC内では自動倉庫等のマテハンを導入しておりますが、それ以外に平置きの保管エリアがあります。

平置き商品のオペレーションにおける繁閑対応はどうしても人海戦術に頼らざるを得ないのですが、ここ流山地域は大型物流施設が数多く立ち並んでいることもあり、倉庫作業員の確保が年々厳しくなっています。よって庫内オペレーションの省人化と生産性向上も急務でした。

―AirRobを選んだ理由と導入経緯―

消防法令対応とBCP対策を考慮した結果、行き着いたのがAirRob

Q.もともとUA流山LCに導入していた自動化マテハンを追加・拡張するのではなく、AirRobを新たに導入した理由を教えてください。

A.

(センコー 石川氏)UA流山LCにもともと導入されている自動化マテハンは高性能ではあるのですが、拡張性に課題があります。既存のマテハンにおいて防火区画をまたいで拡張するためには、新たな系統の設備を増設する必要がありました。今後、UAにおけるビジネス拡大を考えると、消防法令を遵守しつつ、拡張性が高く防火区画をまたぐ設置が可能なAirRobが最適であると判断しました。

BCP対応能力の高さもAirRobを選定した理由の1つです。
過去に震災において自動化マテハンを導入した物流センターがいくつも被災し、大震災によって生じる被害内容なども伝わってきました。こういった情報によると、従来型のガチガチな自動化マテハンが被災したときに調整や復旧に時間がかかることも分かってきました。

その点、AirRobのラックは比較的簡便な構造ですし、またトートを搬送するFloor Botについても故障したら、該当の個体のみを交換・修理をすればよいので、全体の稼働維持を妨げません。こういった点から従来型の自動倉庫・自動ラックに比べて、AirRobはシステム全体が停止するリスクが低いと評価しました。

(UA 藤嶋氏)AirRobは、自動倉庫としては考えられないくらい、設置にかかる費用や手間、コストなどが低く、気軽に導入できる点も評価しました。
実はセンコーの協力も得て、自動化マテハンの比較表を作成しました。
AirRobは、コスト、スループット、保管能力など、ほとんどの比較ポイントで最高評価をつけました。
加えて、UA流山LCで導入済みのt-Sort AGVにおける+Automationの対応力・保守運用力への定性的な評価の高さも、AirRob選定を後押ししました。

―AirRob導入の効果―

AirRobによるUA流山LCの保管能力は、現状で2倍、最終的には5倍以上へ

Q.AirRob導入によるUA流山LCの機能拡張は2段階に分けて実施されると聞いておりますが、その内容を教えてください。

A.

(センコー 石川氏フェーズ1では、主として保管能力の増強を行っており、導入以前の15万ピースから30万ピースへと保管能力をアップ、最終的には3倍の45万ピースへとアップさせます。

フェーズ2では、WMSと自動連携させ、順建て出荷に対応します。また、Floor BotにRFIDゲートを通過させることで、RFIDによる自動検品機能も実装します。これらの機能拡張によって保管能力を最大化させることで、保管能力はAirRob導入前の5倍以上となる80万ピースまでアップします。

Q.現時点でも保管能力の拡大は段階的に実現できていますが、省人化や高スループットの実現といった導入効果は、フェーズ2で実現するということですね?

A.

(UA 藤嶋氏)はい、そのとおりです。

―+Automationへの評価と今後の期待―

スムーズなAirRob導入は、+Automationが持つ豊富な導入経験の証

ロジソリューション 物流コンサル部 コンサルタント 手戸清人氏

Q.AirRob導入に際しては、スモールスタートし、慎重にAirRobを評価してくださいました。

A.

(ロジソリューション 手戸氏)UA流山LCにおけるAirRob導入は大型案件に該当しますが、あえて保管容量2万ピースからスモールスタートしました。
これはプロジェクトの成功確率と精度、そしてオペレーションの確実性を高めるための手法ですが、AirRobは拡張性の高さからスモールスタートからのPoCを兼ねた導入が容易だったため、AirRob導入に伴う庫内オペレーションの確実性・精度も高めることができました。

Q.AirRob導入時における+Automationの対応能力についてお聞かせください。

現場で打ち合わせを行うセンコー 石川氏(左)、UA 藤嶋氏(右)と、+Automation 齊藤玄(中)。
課題解決に真摯に取り組むことは、 +Automationがこだわるポイントの1つである。

A.

(ロジソリューション 手戸氏)今回のAirRob導入では、空きスペースではなく商品が既に保管されている既存倉庫スペースに設置するため、工夫が必要でした。+Automationは今回導入対象となる約1,600坪(※)の区画を6つに分け、既存業務への影響を最小限に抑えたうえで導入する方法を提案してくれました。さすが、こういった事例にも数多くの経験をお持ちだと感心しました。またWMSとの連携についても、当方のさまざまな要望に対し、柔軟な対応をしてくださっています。

(センコー 石川氏)+Automationは、分からないことは「分からない」と正直に答えたうえで、しっかりと後日回答や対策を提示してくれるところを評価しています。

(UA 藤嶋氏)実はローンチの際、多少の課題が発生しましたが、それもスピード感をもって対応してくれました。

Q.+Automationに対する今後の期待を教えてください。

A.

(UA 藤嶋氏)UA流山LCは今、設計当初の設計よりも高いスループットや保管能力を求められています。
これは当社のビジネスが好調に推移している結果なのですが、ビジネスのインフラである物流にはこのような経営状況に応じた対応能力が求められます。人手不足が深刻化する今、人海戦術での対応は限界を迎えています。

だからこそ、自動化マテハンの進化が求められているわけで、+Automationには拡張性や自由度の高いソリューションをもっとたくさん世に送りだしてほしいです。

UA流山LCにおけるAirRob

UA流山LCにおけるAirRob。ステーションにオリジナルデザインを採用し、
さらにトートやFloor Botについてもブランドイメージを統一している。

トートはUAの希望により折りたたみコンテナを採用。
自動倉庫ではボックスが限定されていることが多いが、AirRobではお客さまのご要望に
合わせてトートのカスタマイズが可能。これもAirRob選定の理由の1つとなった。

まとめ

本事例は、自動化マテハンの進化と世代交代を示す、象徴的なものである。

例えば、平積みである。シーズンごとの商品入れ替えや複雑なロット管理が求められるアパレル物流センターや、出荷頻度が極端に高い、あるいは出荷予測が立てにくいネットワーク関連機器・保守部品などを取り扱うインフラ系物流センター。これまでこういった現場では、平積みの持つ入出庫やピッキングの作業性といったメリットの代償として、「保管密度が低くなる」というデメリットを受け入れざるを得なかった。少なくとも7年前のUA流山LC竣工時には、平積みを代替できる自動化マテハンは存在しなかった。しかしAirRobが平積みの利便性と高密度保管を両立させた本事例は、まさしく自動化マテハンの進化と世代交代を示すものと言える。

また、日本社会が直面する物流クライシスに対し、倉庫ビジネスを起点とした解決策の兆しが見えてきたことにも言及したい。今回の取材中、UA 藤嶋氏と「共同輸送や中継輸送の話は聞くけど、『倉庫ビジネスの共同化』の話はあまり聞きませんよね」といった雑談を交わした。物流クライシス対策の基本的なスタンスとして、「物流は競争領域から協調領域へ」という言葉を耳にするようになった。しかしその多くは輸送プロセスを対象としたものであり、倉庫ビジネスを対象にした協調への取り組みはあまり進んでいない。

「AirRobを導入した物流センター同士であれば、『倉庫ビジネスの共同化』もできるかもしれませんね」とは藤嶋氏の弁。確かにその可能性はある。AirRobを導入した物流センター同士であれば、業務プロセスも類似し、物流データも相互に交換可能かもしれない。
つまり、AirRobは物流クライシスという社会課題に対し、「倉庫」を軸とした解決の糸口を担う可能性を秘めている今回の取材は、AirRob、あるいはt-Sortシリーズの新たな可能性を見出す機会となった。

スペック

● 物流センターの特徴:1日3.5~4万ピースを出荷するセレクト編集型SPA(製造小売)における物流センター
● 取り扱い商材:洋服および雑貨
● AirRob活用:仕分け・ピッキング作業および保管
● AirRobクレーン:60基
● Floor Bot:175台
● スロープ型ステーション:12か所
● デスク型ステーション:8か所
● 有効段数:11段
● 保管ロケーション数:約69,000ロケーション
● 設置面積:約1,600坪(※)

(※)AirRobだけの設置面積は約1,600坪。運用面積を含めると約2,000坪。

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