SIG Service株式会社
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越境EC「Doorzo」を運営するSIG Serviceが、保管ソリューションAirRob(エアロボ)で、生産性を30%向上させた上で、新規事業への足がかりを生み出せた理由
■導入シチュエーション
○ 一日あたり1.3万~1.5万ピースを出荷する代理購入サービス「Doorzo」(ドーゾ)の物流センター
○ t-Sort AGV(sd5)およびt-Sort 3Dを導入していた物流センターに、新たにAirRobを導入
■ 導入前の課題
○ 代理購入というビジネススキーム上、ユーザーは複数のECサイトやフリマアプリから商品を購入するのだが、この保管スペース効率を向上させる必要があった
○ 人手不足の今、経験が浅い作業員でも高い生産性と誤出荷抑止等の品質向上を実現したうえで、作業員の歩行距離短縮などの労働環境改善も図る必要があった
■ 導入理由
○ 従来の棚やt-Sort 3Dでは活用しきれていなかった物流センター内の上空空間を有効活用、天井高6mの倉庫スペックをより活かせると評価
■導入後の効果
○ AirRobの導入によって、生産性が約30%向上
○ 誤出荷率が1万分の1以下と大幅に改善
○ 作業員が仕分け・ピッキングの際に歩く距離が圧倒的に減少
○ 「ロボットによって自動化している倉庫」というアピールが効果を発揮し、作業員の採用実績が向上
○ 経験の浅い新人作業員でも、即戦力化できるようになった
○ 顧客満足度が向上
AirRob導入までの経緯
2023年1月:
都内5か所に分散していた倉庫のひとつに、t-Sort AGVを導入。
(広さ400平方メートルのスペースにt-Sort50台、300間口)
t-Sort AGVを選定した理由は、「省スペースで高い効果を期待できること」「(既に倉庫移転を考えていたため)移設が容易であること」。
2024年1月:
倉庫間の拠点間輸送を廃し、より効率的な物流センター運営を実現するため、GLP三郷Ⅱへ移転。
t-Sort 3Dを導入。
導入理由は、t-Sort AGVよりもスペース効率を高めるため。
2025年1月:
AirRob稼働開始。
―「t-Sort」導入前の背景と課題―
ユーザー数約400万人、1日出荷数1.3万~1.5万ピースの高稼働物流センターの品質と生産性を高めるために

SIG Service株式会社 代表取締役CEO 張章(チョウ ショウ)氏
※以下、ご回答はすべて張さまに行っていただいています。
Q.貴社が運営する代理購入サービス「Doorzo」について教えてください。
A.中国を中心に約400万人のユーザーを抱える越境ECサイトです。
「Doorzo」は、楽天市場、メルカリ、BOOKOFFなど、日本国内の複数ECサイトとデータ連携し、日本国外ユーザーのために商品を代理購入し、お届けします。
当社は2013年12月に設立し、当初は日本国内での通販事業を行っていましたが、2015年から越境ECを開始しました。転機となったのは2019年。「Doorzo」のモバイル向けアプリケーションを提供したことで、1日1000人以上のペースでユーザーが増えていきました。
中国向けの越境ECの中では最大手となります。
Q.ユーザーはどのように「Doorzo」を利用しているのでしょうか?
A.ユーザーは「Doorzo」にアクセスし、欲しい商品をカートに入れます。「Doorzo」は、90日間の無料保管サービスを提供しており、購入品がまとまってから発送を行います。その方が送料が安くなりますから。
1ユーザーの平均的な保管期間は10日間程度、購入商品数は4~5アイテムです。
現在の三郷物流センター内では、常時数十万ピースを保管しています。
Q.膨大なアイテムの取り扱いは手間ですし、誤出荷などの品質維持も大変だったのではありませんか?
A.ご指摘のとおりです。
以前は、仕分けで約8時間、出荷で約10時間掛かっていました。
フリーロケーション管理のため、作業員は1日中倉庫内を歩き回り、身体的負担が大きかったです。
誤出荷も課題でした。
越境ECでは誤出荷商品の返品が難しく、返金するしかないのですが、そのコストも課題でした。
Q.作業員の教育も、とても大変だったのではないでしょうか。
A.特にピッキング作業とアソート(同梱)作業は、作業員の経験とスキルを必要としました。作業に慣れるまでには10日間~2週間掛かります。
そのため人数も、ピッキング・アソート工程に一番多く配置していました。
AirRobを選んだ理由と導入経緯

三郷物流センター内では、AirRobだけでなく、都内の旧倉庫から移設したt-Sort AGV、三郷物流センターに移転してから導入したt-Sort 3Dが稼働している
Q.AirRobを導入した理由を教えてください。
A.従来、高さ2.1mの棚で保管をしていました。作業員の手の届く高さを考慮してこの高さにしたのですが、GLP三郷Ⅱは天井高が6mあり、棚の上空空間を活用できていませんでした。
さらに高い保管密度を実現したいと考え、AirRobを導入しました。

従前の方法では、商品は棚(高さ2.1m、フリーロケーション管理)に保管され、ユーザーからの出荷依頼を待つ
Q.AirRobを選定した理由を教えてください。
A.他社製品も検討したのですが、もともとt-Sort AGVを導入していたことに加え、コストメリット、機能性、拡張性などを総合的に判断したところ、AirRobを超えるものはありませんでした。
Q.t-Sort AGV、t-Sort 3D、AirRob(以下、t-Sortシリーズ)の導入は、人材確保にも有効だったと聞いています
A.はい、そのとおりです。
新たに移転した地域では都内と比べて労働力の確保が難しく、人材の採用に苦戦しました。
そこで、t-Sortシリーズを前面にアピールし、「自動化が進んでおり、身体に負担が少ない職場環境」を募集広告でアピールしました。
―AirRob導入の効果―
人件費を20~30%削減できたうえ、誤出荷削減、顧客の安心感・信頼感も勝ち得て、トータルの生産性は約30%向上

三郷センターに導入したAirRobは高さ5.5m(天井高は6.0m)だが、棚は最大9.0mまで可能
Q.AirRobの導入効果について教えてください。
A.t-Sort AGVの導入後は、作業効率は2倍以上アップし、さらにt-Sort 3D導入によって、以前は1日約8時間掛かっていた仕分け作業も3時間以内に終わるようになりました。
さらにAirRobの導入により、倉庫作業員の人件費を20~30%削減に加え、物流センター業務トータルで、約30%の生産性向上を見込んでいます。
なお、t-Sortシリーズを導入したことで、荷待ち時間の削減もできました。
以前は、梱包が追いつかず、集荷に来たトラックドライバーを待たせてしまうこともありましたが、t-Sortシリーズ導入後は荷待ち時間を大幅に削減できたのです。
つまり物流の2024年問題対策にも、t-Sortシリーズが貢献しています。
Q.保管密度の向上効果もあったのではないですか?
A.そのとおりです。
AirRobは作業効率も向上しますが、なんと言っても保管密度の向上効果は大きいです。
現在、天井高6.0mに対しAirRobは5.5m、収納ケース数は1万個になりますので、保管密度は大幅に向上しました。
Q.働いている作業員の皆さまにおける定性的な効果もお聞かせください。
A.以前は倉庫の中を1日中歩き回っていましたが、今は荷物が目の前に運ばれてくるわけですから、身体にかかる負担は大きく減りました。
作業員たちの配置計画を担う管理職の負担も大きく減らすことができました。
仕事が多いと、どうしても作業員をたくさん現場に入れて、「後はがんばろう!」と精神論に頼ってしまうこともあったのですが、これは作業員だけでなく、管理職もストレスが溜まります。
t-Sortシリーズを投入したことで、作業の見通しが立てやすくなった結果、スケジュールや人員配置計画も立てやすくなり、管理職の生産性向上にも貢献しています。
忙しいときには管理職も現場で手伝っていましたから、t-Sortシリーズの導入は、現場作業員だけではなく、管理職の負担も減らしています。これはとても嬉しい導入効果でした。
Q.採用や教育に対する効果を教えてください。
A.倉庫作業員の仕事をご存じない方の中には、「うす暗い倉庫の中で重たいものを運ばされる力仕事」といったイメージを持っている方もいます。
「ロボットを導入、自動化が進んでいる倉庫」というアピールは、「どんな倉庫なんだろう?」と興味を引くため、採用促進にもつながっています。
人材教育にもt-Sortシリーズは貢献しています。
導入前は、当社の業務に慣れてもらうまでに10日間から2週間は必要でした。しかしt-Sortシリーズを導入後は、初めて働く人でも簡単なレクチャーを行うだけで、即戦力にすることができています。
離職率も低下しています。
チームで働くのではなく1人で黙々と仕事をすることが好きな方もいます。こういった方々は、ロボットをパートナーとして働くほうが、性に合うようです。
このように、t-Sortシリーズの導入は、「自動化が進んだ先進的な物流センターで働くことができる」という新たな価値を生み出し、採用実績の向上、教育に対するコストダウン、離職率の低減といった効果を得ています。
Q.「Doorzo」では、物流センター内の様子をライブ配信しているそうですね。その理由を教えてください。
A.ライブ配信は、顧客満足度向上のために行っています。
ユーザーは、t-Sort AGVやAirRobが稼働する様子を見て安心感・信頼感を感じ、顧客満足度の向上につながっています。
当社では他にも顧客満足度向上のため、「輸送箱保護のために、シュリンクフィルムで包装」、「代理購入した商品の具合を撮影し、ユーザーにご提供する」といった作業も行っています。後者は、特にリユース品において、「内容物がきちんと揃っているか?」「傷や汚れはないか?」といった不安を解消するためです。
+Automationへの評価と今後の期待
+Automationは100点満点
コスト削減効果、生産性向上効果だけでなく、張社長は「AirRob導入によって新規事業への足がかりもできた」と評価する
Q.+Automationによる導入サポートを評価してください。
A.100点満点ですね!
パーフェクトでした。
初期導入作業はもちろん、消防法などの各法律をクリアしたうえで、耐震対策も行っていただきました。
Q.今後のt-Sortシリーズ拡張予定や、ビジネス展望を教えてください。
A.
まず、AirRobをもっと増やしたいです。
そのうえで、t-Sort AGV、t-Sort 3Dの盤面ともっと近づけるといったレイアウト変更や、あるいはAir Robとt-Sort AGV・t-Sort 3Dを直接連動させたいです。
また、AirRob導入数を増やしていけば、物流センター内のスペースにさらに余裕が出てくるため、今後は3PLなどの新規事業を検討する足がかりとなりました。
取材にご協力いただいたSIG Serviceの張社長および作業員の皆さま、ありがとうございました。
Doorzo物流センター、「t-Sort」を用いた業務プロセス

代理購入された商品は、Doorzo物流センターに入庫した時点でユニークな管理番号を割り当てられ、その荷姿のまま採寸される。

t-Sort AGVとt-Sort 3Dは、仕分け・ピッキング工程を担う

t-Sort AGVと-Sort 3Dは、荷物のサイズや出荷状況によって使い分けている

AirRobは、仕分け・ピッキングに工程に加え、高密度な保管も行うことが可能

AirRobの1通路あたり4基のクレーンが約30%の生産性向上を実現する

5か所のステーションで、AirRobへの商品の入出庫をコントロールする

SIG Serviceでは、ECサイトに商品の画像やスペックを掲載する「ささげ業務」や、品質チェック、検品も行い顧客満足度を高めている

SIG Serviceでは、輸出時の外装箱破損等を防ぐため、出荷時に外装箱の上からシュリンクフィルムを掛けている
まとめ
中国向け越境EC最大手の「Doorzo」を運営するSIG Serviceは、常時保管数数十万ピース、日々出荷数13,000~15,000ピース(パッキング数は約5,000個)という高密度な物流センター能力と、競合他社を追従させない高い顧客満足度を達成する必要があった。
張社長は、優れた経営者が備える「ビジネス上の痛みを感知する能力」と「その痛みをすばやく解決する能力」に長けている。
それゆえに、SIG Serviceは、急速に拡大するビジネスに素早く歩調を合わせて、物流センターの増加、t-Sortシリーズによる自動化、移転集約、そしてAirRobによるさらなる自動化をスムーズに実行することができたのだろう。
本事例は、t-SortシリーズやAirRobが、日々変化・進化する物流施設への対応力、課題解決能力をいかんなく発揮したものと言える。
スペック
- 物流センターの特徴:越境ECにおける物流センター
- 取り扱い商材:エンタメ関連商品、アパレルなどの雑貨
【t-Sort AGV】
- 活用:仕分け・ピッキング作業
- 導入機器:t-Sort sd5
- 導入台数:72台
- シュート設置数:333間口
【t-Sort 3D】
- 活用:仕分け・ピッキング作業
- 導入台数:32台
- シュート設置数:1260間口
【AirRob】
- 活用:仕分け・ピッキング作業および保管
- 収納トート(箱)数:10,000個
- 保管ラック:6列
- AirRob:24台
- FloorBot:80台
- ステーション数:5か所
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